多重スケールの地形変数を用いた機械学習による地すべり滑落崖の検出
- Keywords:
- Landslide scarp, Random forest, Landslide modeling, Landslide inventory, Romania, Japan
地形プロセスはさまざまな空間スケールで作用するため,それらの形態的表現,すなわち地形変数(Land Surface Variables, LSV)は,それぞれ適切な空間スケールで算出されるべきである。しかし,崩壊・地すべり危険度評価のモデル化や,それらの検出に関するこれまでの方法では,LSVには単一のスケールがしばしば選択されてきた。そこで本研究では,各々のLSVをその最適なスケールに適合させることによって,崩壊・地すべりの自動的な検出を改善するための方法を提案する。崩壊・地すべりの形態的特徴が異なる2つの地域に着目し,まず,デジタル標高モデル(Digital Elevation Model, DEM)から,標準的な3×3移動窓で7つのLSVを算出する。次に,崩壊・地すべりの痕跡と個々のLSVとの間で,ロジスティック回帰が最もよく合うスケールが見つかるまで,より大きな移動窓で平均統計量を算出し,各LSVを再スケーリングする。さらに,最適スケールのLSVは,ランダムフォレスト(RF)モデルの入力データとして使用する。モデルの精度に対するスケーリング予測子の影響を計算するために,曲線下面積 (Area Under the Curve, AUC)を使用して,入力データとしてスケーリングされていないLSVのRFモデルからの結果と比較する。その結果,(i)異なるLSVが異なる最適スケールを有すること,(ii)一つ目の調査地域ではAUCが0.73から0.80まで,そして2つ目の調査地域ではAUCが0.59から0.73まで変化し,多重スケールの手法がモデルを有意に改善したことを示した。このことから,複雑な地形環境において,崩壊・地すべりの自動検出モデルを使用する場合,多重スケールの変数を用いる方法を検討すべきであるといえる。