日本語要旨

地球近傍の宇宙空間でおこる擾乱のシミュレーション:2.オーロラ・サブストーム

サブストームは地球近傍の宇宙空間で起こる突発現象である.オーロラが突然明るく光り出すオーロラ爆発や激しい地磁気の乱れを伴い,通常1~2時間続く.地球近傍の宇宙空間(磁気圏)では引き延ばされていた磁力線が急に縮み,高温のプラズマが地球近くに注入されるなどの大変動が同時に起こる.磁気圏・電離圏の状態は一変することから,磁気嵐や放射線帯変動を理解する上でもサブストームは極めて重要である.また,地磁気の乱れは地上の送電設備に誘導電流を流し,高温プラズマの注入は人工衛星の帯電をもたらすことが知られており,社会に対する影響も大きい.サブストームの究極的な原因は太陽から吹き出すプラズマの流れ(太陽風)や磁場であるが,サブストームが発達する過程の全容はよく分かっておらず,宇宙空間物理学上の大きな問題となっている.複雑なサブストーム現象を理解するための手段の一つとしてシミュレーションがある。特にREPPUと呼ばれる電磁流体シミュレーションはオーロラ爆発をはじめサブストームに伴って生じる多種多様な変動を良く再現できることが示されている.本論文ではREPPUの計算結果を詳しく解析することによって得られたオーロラ・サブストームの一連の発達過程と惑星間空間から地球に至るエネルギーの流れについてレビューする.