ISS-IMAP大気光イメージャーによる赤道プラズマバブルの観測
- Keywords:
- ISS, IMAP mission, Airglow, Equatorial Plasma Bubble, Geomagnetic storm
電離圏においてプラズマ密度が2桁も減少することがある赤道プラズマバブル(以下,EPB)は,その内部に様々なスケールの沿磁力線不規則構造を含んでいるため,広い帯域の電波に対して影響を及ぼす.EPBの発生により衛星通信やGNSS測位電波の途絶が生じる可能性があることから,EPBの発生メカニズムの解明や発生予測が重要になってきている.人工衛星によるEPBの観測は,電子密度,極端紫外線を用いたものがこれまでにも行われてきたが,可視光を用いた全球の観測は行われていなかった.2012年から2015年にかけて,宇宙ステーションから地球大気を光学観測するIMAP計画が実施され,可視光線・赤外線で大気光を観測するVISI観測器により,EPBの検出が可能となる630 nm大気光データが得られた.そこで本研究では,電子密度による観測と大気光による観測とでEPBの発生頻度に違いがあるかを調べるため,630 nm大気光データを用いて,EPBの発生頻度について解析を行った.全ての大気光データを,目視にて確認することはかなり困難であることから,本研究では大気光データにおけるEPB検出アルゴリズムを開発し,EPBの発生頻度について解析を進めた.その結果,EPBの発生分布は過去の衛星観測データと極めて良い一致を見せた(図参照)ことから,このアルゴリズムがEPB検出に有用であることが示された.また,その発生確率もほぼ似たような値を示したが,太陽活動の違いを考慮すると,低高度で発生頻度が高いことが明らかとなった.発生頻度分布を導出した際,過去の分布と異なる傾向が,6月夏至付近の太平洋領域で現れた.過去の研究では,この領域はEPBの発生頻度は小さいと考えられていたが,今回の結果では,かなり高い発生頻度を示していた.その違いの原因について調べたところ,2013年6,7月における磁気嵐時に,この領域でEPBが多く発生していたことが明らかとなった.この磁気嵐は惑星間空間磁場が南向きになったことにより発生したことが確認されたが,同様のメカニズムで発生した磁気嵐時に,極域から侵入した電場がEPBの発生を促す事例が報告されており,今回の結果でも,その影響によるものが現れたと考えられる.