日本語要旨

粉体流における粒子の凝集に関する室内実験

天体表層を覆うレゴリス粒子層への衝突で生じる放出物カーテンにおいて、レゴリス粒子間の非弾性衝突によりクラスタリングや凝集が起こる可能性がある。粉体層ターゲットからの衝突放出物の観測を行なった先行研究は、衝突放出物に離散的構造が形成することを見つけ、これらが衝突クレーター周りに堆積することでクレーター光条線の離散的パターンが形成する可能性を示唆している。

一方、自由落下する粉体流を調べた先行研究は、粒子の付着力が原因で、粒子同士が非弾性衝突することで凝集し、流れが不連続となり、凝集体が形成することを示している。

そこで、本研究では、粉体流における粒子の凝集体形成の条件をさらに調べるため、球形粒子と不規則な非球形粒子両方を使って自由落下粉体流の室内実験を行なった。さらに本研究では、粒子の付着力測定を、原子間力顕微鏡を用いた先行研究とは異なり、遠心法を用いて行なった。この手法は、様々な形状の、複数の粒子の同時測定および結果の統計的解析が可能であるという利点がある。

実験の結果、同様の相対速度と付着力の値をもつ粒子の場合、不規則形状粒子が球形粒子よりもずっとより容易に凝集体を形成することを見つけた。また、球形粒子と不規則形状粒子の凝集体の軸比は同様であり、以前の球形粒子を用いた室内実験研究で見られた軸比と合致する一方で、不規則形状粒子の凝集体のサイズは球形粒子のサイズよりも大きいことを見つけた。

凝集体の形成しやすさとサイズは、粉体流における粒子の形状や付着力の指標として用いることができるかもしれない。また、この粉体流における凝集研究は、大気のない天体におけるクレーター光条線だけでなく、火星衛星Phobosに見られる特徴的な線状地形のgrooveの起源に新たな洞察を与える可能性がある。