日本語要旨

無人航空機と地上レーザを用いたアクセス困難な陸繋島における侵食量の経時変化の計測

無人航空機(UAV、ドローン)と地上レーザ(TLS)を用いて、千葉県東部太東崎に位置する陸繋島(通称、雀島)の海食崖を測量し、侵食量の経時変化を求めた。計測は2年の間に7回実施し、計測間隔は約4か月であった。雀島は三方を海に囲まれており、また周囲は急勾配の崖であるため、地上から全領域を測量することは不可能である。また、逆勾配(オーバーハング)を含む複雑な岩盤形状をしており、人工衛星やセスナ機など高高度からの計測も不可能である。今回、UAVとTLSによる計測データを融合することで、既存の手法では計測不能な対象地に関して、高精度かつ高解像度な3次元の計測データを取得することに成功した。UAVに搭載したカメラの撮影方向を変えて崖面を低空かつ横から撮影することが可能であり、垂直あるいはオーバーハングした崖面の形状も詳細に計測することができた。また、計測に係るランニングコストおよび労力が小さいため複数回の計測が容易であり、侵食の詳細なメカニズムの解明に繋がる高頻度観測も実現することができた。各計測期間における地形変化量(≒侵食量)を3次元点群データの解析を通じて定量化することにより、侵食量の詳細な経時変化を求めた。さらに、侵食を発生させる主要な誘因として地震と波浪に注目し、各計測期間における両イベントの発生頻度と侵食量の対応関係を検討した。その結果、地震よりも波浪のほうが崖の侵食に対する影響が大きいという予察的結果が得られた。