既存の地形データにおける不確実性のシミュレーションと定量化:地形変化解析を推進するための第一歩
- Keywords:
- Stochastic models, digital terrain models, legacy data, geomorphic change detection, high-resolution topography
急速な技術進歩や、地球表層の変化に関する基礎研究や応用研究の進歩により、地形データの価値の認識が高まり、地形データのアーカイブが増加しつつある。こうした流れのなか、 最近の高解像度地形データを従来のデータと統合して利用する必要が生じることがある。しかしながら、従来のデータセットを、より最近の高解像度データと統合する場合、いくつかの技術的課題およびデータの不確定性の問題が障壁となりえる。まず、過去の地形データは、より最近の高解像度地形データと容易に適合しないフォーマットで記録されていることがある。また、従来の地形データには、未知のエラー、あるいは未報告のエラーが含まれていたり、既知の欠陥があったりして、データの不確実性を説明するのが難しい場合や、結果が大幅なバイアスをもつ可能性もある。すなわち、地形や景観が自然や人為的なプロセスに応じてどのように変化してきたのか、また今後も変化し続けるかを導き出すにあたり、研究者は、データソースに依存する困難な課題に直面している。
本研究では、さまざまなデータソースをもつ従来の地形データの不確実性について、どのように評価し、また現在の空間データ収集手法と組み合わせて、意味のある地形変化をどのように検出するのかといった問題について検討する。我々は、地形の不確実性を、数値シミュレーションや物理的モデル実験から、空間的および時間的変動を考慮した確率論的プロセスと見る。数値シミュレーションには、従来の地形データに一般的にみられる多数のデータソースを組み込み、物理モデルに関してはより新しい高解像度地形データの取得技術に焦点を当てる。デジタル地形モデルの「アンカーポイント」において観測された標高の不確実性は、確率的推定器の「状態」を使用してモデル化できる。確率的推定器には、不確実性の時間的変化を追跡し、過去のさまざまな時点で観測されたセンサ測定値を組み込むことが可能である。センサがアンカーポイントを直接観測しない場合であっても、アンカーポイントとセンサ測定値との間の幾何学的関係を、空間的相関関係によって近似することができる。いくつかのセンサ(キネマティックGNSS、ALS、TLS、およびSfM-MVS)を用いた数値シミュレーションにより、推定誤差が実際の誤差と整合することが示された。一方、2D画像とスタティックGNSSからのデータは、主にはそれらが低密度であることから、推定器に組み込んだ場合も同様には機能しなかった。推定器は、アンカーポイントにおける地形データの推定履歴や、不確実性とそれらの相互関係も提示する。これにより、従来の地形データと高解像度地形データとを統合する我々のアプローチが有効であることが示された。今後は、さらなる調査とフィールドデータを用いた検証が求められる。