弱度間伐は整備された針葉樹林の風景評価と心理的回復効果に影響を与えるのか?
- Keywords:
- Landscape appreciation, Psychological restoration, Forest therapy, Recreational use, Thinning, Forest management
針葉樹林(カラマツ二次林)内において、弱度間伐(本数:16.6%、胸高断面積:9.3%)を行えば、被験者の風景評価や滞在を通じて獲得される心理的復効果に対してどのような影響が生じるのかを,オンサイトで調べた。
実験は2013年の5月(間伐前)および同月と平均気温がほぼ同じ紅葉前の10月(間伐後)とし、富士癒しの森研究所敷地内の同一の針葉樹林実験プロット(0.25ha; 50m×50m)で実施した。20~40代の男女計15名を両実験の共通の被験者とした。
被験者には、テント内のタープで風景のみを遮蔽されたコントロールセッティング(遮蔽条件: Enclosed session)、およびタープを取り去り、森林風景が見える実験セッティング(開放条件:Forest-view session)をそれぞれ15分間体験(暴露)させた。なお両セッティングにて、環境への暴露の前と後に、心理的回復効果を測定可能な調査票(気分(POMS)、感情(PANAS)、回復感(ROS))を渡してそれぞれ回答を求めた。また暴露後のみに、風景評価を測定可能な調査票(印象評価(SD法)・回復特性評価(PRS))を被験者に渡し、さらに回答を求めた。
分析の結果、心理的回復効果および風景評価の両者について、間伐を行ったことが影響したと思われる得点の差異は見られなかった(実験日の気象条件や実験への参加経験が影響したと思われたものを除く)。さらに考察の結果、①すでにある程度整備された針葉樹林において利用者の心理的回復効果や風景評価を操作したい場合には、今回以上のさらに強めの間伐を行う必要があること、②心理的回復効果については、ある程度管理された森林に対して、さらに弱度間伐を行ったとしても、必ずしもその効果が高まるとは限らず、反対に低下させてしまう可能性もあることなどが示唆された。