日本語要旨

潮汐固定された地球的な惑星の中層大気循環と海面温度の役割

3次元化学–大気循環結合モデルCESM1(WACCM)を用いて、海面温度分布の違いがG型星の周囲にあり潮汐固定された地球的な惑星の中層大気に与える影響を調べた。次の(1)~(3)の3種類の90日計算を行なった。(1) 現在の地球を模した設定を用いたシミュレーション計算、(2) 潮汐固定された地球的な惑星に対して潮汐固定された水惑星の海面温度を与えた場合のシミュレーション(CTLE)、(3) 潮汐固定された地球的な惑星に対して現在地球の海面温度を与えた場合のシミュレーション(WTLE)。これらのシミュレーションによって得られた結果は以下の通りである。まず、風速場に関しては、CTLEでもWTLEでも、地表から中間圏まで、昼側に上昇流・夜側に下降流が形成されることが示された。下部・中部成層圏の水平風分布は、CTLEとWTLEで同様のものとなるのに対して、中間圏の水平風分布には違いが出る(大規模な渦と強風領域が形成される場所が異なる)。次に、温度分布に関しては、CTLEに比べてWTLEでは下部対流圏の全球平均温度が3.7 K高くなる。これは、WTLEの方が、上向き長波放射フラックスの吸収量と顕熱フラックスが大きくなるためである。上部対流圏の全球平均温度はCTLEに比べてWTLEでは4 K低くなる。これは、WTLEの方が断熱温度構造を持つ領域(対流圏)がより上空まで広がるためである。下層成層圏の全球平均温度は、CTLE に比べてWTLEでは3.8 K高くなる。これは、WTLEの方が、上向き長波放射の吸収量が大きくなるためである。下部中間圏の全球平均温度はCTLEに比べてWTLEでは1.13 K低くなる。これは、WTLEの方が、中間圏において大気波動の砕波がより多く起きるためである。上部中間圏の温度は、CTLEに比べてWTLEでは4.3 K高くなる。最後に、オゾン層に関しては、WTLEの方が、第二オゾン層(secondary ozone layer、高度 90~110k kmの領域に生成されるオゾン層)におけるオゾン体積混合比は40.5%高くなる。