太陽地球システムの短期変動:CAWSES-II期間に得られた成果の概略
- Keywords:
- Solar activity, Space weather, Coronal mass ejections, Flares, Solar energetic particle events, Geospace impact, Geomagnetic storms
この論文では、太陽活動の短期変動と、それが地球周辺の宇宙環境にどのように影響を与えているかについて、CAWSES-II期間中に得られた成果を概観する。太陽活動が第24太陽活動周期の極大に向けて上昇していく期間における太陽地球系システムの振る舞いを調べるために、CAWSES-IIが計画された。第23太陽活動周期に続いた非常に深い極小期の後、大変小さい第24周期の極大(MiniMax24)に向けて太陽活動は上昇していった。その結果、ここで示される結果の多くは、第23期に比べて第24期の活動度が弱いという点に関連している。地球とその周辺の宇宙空間であるジオスペースに即座に影響を与える太陽の短期変動は、閉じた磁力線から発生する太陽爆発と、コロナホールからの高速太陽風である。太陽爆発からは、電磁的な放射である太陽フレアと、物質の放射であるコロナ質量放出(CMEs)の両者が発生する。一方でコロナホールからは高速の太陽風が流れ出し、それが前を行く遅い太陽風と衝突することによって、太陽の自転と同期した相互作用領域(CIRs)を形成する。高速のCMEsは、その前面の衝撃波が高エネルギープラズマ粒子を加速し、大きな磁気嵐を引き起こすことで地球に影響を与える。一方でCIRsとそれに伴う高速太陽風(HSSs)は、回帰性の小規模な磁気嵐を引き起こすと共に、何日間も長く続くオーロラ活動も伴う。CIRsは磁気圏で相対論的電子(キラー電子)の加速も引き起こす。弱い太陽活動期の大きな特徴の一つは、背景となる惑星間空間である太陽圏が強い太陽活動期の時とは異なる状態にあるために、CMEsによる衝撃波形成や磁気嵐誘因において重大な違いがある点である。最後に、2012年7月23日に太陽の裏側で発生した巨大宇宙嵐イベントによる極端宇宙天気現象について議論する。これらの研究の多くは、太陽と地球を結んだ線の上の鍵となる複数の点において直接またはリモートセンシングによる観測データが同時に取得できるようになったことにより、得られた成果である。