中間圏および下部熱圏の力学:レビュー
- Keywords:
- Atmospheric tides, Gravity waves, Planetary waves, Middle atmosphere, Mesosphere, Lower thermosphere, Wave coupling
中間圏-下部熱圏 (MLT) (高度60-110km) の力学は波とその効果によって支配されている。MLTの基本的な構造は小規模重力波による運動量の蓄積によって支配されており、これによって中間圏界面における夏極から冬極への循環が駆動されている。大気潮汐もまたMLTの力学に重要な要素である。広範囲に展開した地点観測網、人工衛星、数値モデリングはいずれも、MLT内の太陽非同期の潮汐モードは、熱圏・電離圏との直接的な結合を引き起こし、以前にも増して重要であることを指摘している。冬期の突然昇温等のより下層の大気中の主要な擾乱は、MLTの循環パターンや熱的構造に急激な変化をもたらす。赤道中間圏においては、準2年の時間スケールの変動もみられるが、主に重力波収束によって駆動される半年スケールの東西風の振動が卓越している。準2日波のような惑星規模の波動は、特に南半球において夏季MLTの力学の一時的な支配要因となり、高緯度MLTの熱的構造と物理特性の急激な変化をもたらす効果があるだろう。本論文では、MLTの力学に関して、特に過去10年間の研究の進展に着目した簡単なレビューを行う。