高圧における金属鉄の音速: その実験的制約と外挿、そして地震学モデルとの比較
- Keywords:
- Sound velocity measurements, High pressure, hcp-Fe, Extrapolation schemes, Earth’s inner core, Comparison with seismic models
極端温度圧力条件下における鉄の音速の決定は、地球のコアの地震学的情報を解釈するうえで不可欠なことであるが、実験的に非常に困難な課題である。ここでは、hcp-鉄(六方最密充填構造(hexagonal close-packed, hcp)にある鉄)の縦波速度に焦点を絞り、金属鉄合金のメガバールに及ぶ超高圧下で音速を測定する様々な技術・方法について概説した。
これまで報告されてきた高圧下における密度・地震波速度の測定値は、用いられた圧力スケールや密度を求めるための状態方程式に違いがあり、そのまま比較することができない点に注意すべきである。ここでは、これらの問題点に留意して、これまで様々な方法で測定されてきた室温高圧下でのhcp-鉄の縦波速度と密度について、共通の圧力スケールと状態方程式を用いて校正し直し、比較することによって、縦波速度と密度の圧力依存性と密度依存性についての基準となる関係式を求めた。
この関係式は、地震波モデルと比較するために必要な、hcp-鉄の縦波速度と密度の温度依存性、融点近傍効果、ニッケルや軽元素の存在などの複雑な効果をより正確に評価して、最終的に信頼できる内核の化学組成を制約するために重要な基準となる。