日本語要旨

人工マクロポアによる劣化土壌における下方浸透促進と有機物貯留

土壌は陸域最大の炭素貯留源であるが,透水不良などによって劣化が進み,有機物が地中に到達しない特徴を呈していた.耕耘(こううん)をすれば土壌の細粒化によって風雨で流亡し,また有機物の分解促進に繋がる.一方自然の土壌を三次元CTで観察すると,植物根や土壌動物によって作られた粗大間隙「マクロポア」があり,土壌中の水・物質移動に多大な貢献をしていた.そこで土壌の二重間隙構造性を模した人工マクロポアを作り,劣化土壌環境を修復することを考えた.鉛直中空立坑にグラスファイバーを挿入して構造維持の効果と毛管力発現を期待し,排水不良で貧栄養の赤黄色土壌において下方浸透促進効果,有機物貯留の程度,そして植生の回復程度について評価した.

するとマクロポア区は多くの場合において,降雨に対する水分量の増加が多くなり,下方浸透促進効果が観察された.特に深さ50cmまで浸透水が到達する様子が明らかで,その違いは顕著だった.一年後に土壌炭素量を図ると明らかにマクロポア区の方が炭素量が多く,下方浸透促進効果を評価することができた.また,時間を要すると思われた植生の回復もわずか一年でその効果が観察され,植物バイオマス量は倍近くになった.増加した土壌炭素量は,0.0012g-C・g-soil-1・yr-1 つまり 7.0t-C・ha-1・yr-1 であり,草原や植林による炭素増加と同程度の効果があることが明らかになった.なお,もともとが排水不良で貧栄養であったため,初年度に大きな値がでた可能性があり,継続した調査を続けている.