日本語要旨

高温高圧下における熱水流体とマグマの相互作用

含水ナトリウムアルミナケイ酸塩系における含水マグマと熱水流体中のケイ酸塩成分の重合度 NBO/Tの温度依存性

この論文は、地球内部の含水マグマ系におけるマグマと流体の構造と物性に関する最近の実験結果についての総説である。流紋岩マグマや安山岩マグマのような珪長質のマグマへの水の溶解度が、なぜ玄武岩マグマへの溶解度よりも非常に大きいのかは、メルト中への水の溶解度とメルトの化学組成の間の複雑な関係によって説明することができる。また、熱水流体中のケイ酸塩の溶解度もまた化学組成と金属イオンの電気的性質によって説明することができる。500℃から550℃までの温度領域では、熱水流体や含水マグマ中において水素結合は、重要な役割を担っていない。むしろ含水マグマおよび熱水溶液の性質は、ケイ酸塩の分子種Qn(ここでnはそれぞれの分子種における架橋酸素の数である)が総化学組成、ケイ酸塩の組成、温度、圧力によってどのように変化するのかによって決まる。ケイ酸塩マグマ、熱水流体、そして超臨界流体においては、水とマグマの相互作用を記述する反応は共通である。水がマグマに溶解するとマグマの重合度はその組成や含水量によって変化する。アルカリに富む珪長質マグマの性質は、より苦鉄質なマグマよりも大きく含水量に依存する。このような含水マグマの輸送特性や構造はQnの変化によってモデル化することができる。含水系の溶融関係や微量成分の分配係数も同様に、このQnによって記述することができる。さらに、安定同位体の分別作用(例えば水素同位体比D/H)も、これによって合理的に理解することができる。水溶液中のケイ酸塩成分は、微量元素の溶解度を桁違いに増大させ、水素Hや重水素Dの錯体の分子種を変化させることによって、HやDの分別係数を大きく変化させることが明らかになっている。