高密度・高粘性の大陸ブロックが存在する場合の2次元粘弾塑性沈み込みモデル:西南日本の紀伊半島直下のスラブ形状の事例研究
- Keywords:
- Slab geometry, High density and viscosity, Visco-elasto-plastic rheology, Steep subduction, 2D numerical models
西南日本では、約2600万年前~1500万年前の比較的年代の若い四国盆地を擁するフィリピン海プレートが、南海トラフから沈み込んでいる。南海トラフに沿って、四国~中国地方の下ではフィリピン海プレートは低角で沈み込んでいるものの、紀伊半島下では高角で沈み込んでおり、多様な沈み込み様式を示している。南海トラフ全体に沿ったプレート沈み込みの開始時期は約1500万年前であるが、現在のスラブ形状は、このように四国~中国地方の下と紀伊半島下では大きく異なっている。紀伊半島下における地震波トモグラフィーにより、高密度の岩塊の存在に関連した高速度帯の存在が明らかにされている。先行研究では、この高密度の岩塊の位置が熊野深成岩体に代表される酸性岩群と一致していることが示唆されており、紀伊半島下におけるフィリピン海スラブの高角の沈み込みの原因であると考えられている。本研究では、収束帯近傍に位置している紀伊半島直下の高密度・高粘性の岩塊が、フィリピン海プレートの沈み込みのダイナミクスに及ぼす影響を定量的に調べた。具体的には、南海トラフ近傍の大陸プレート内に高密度・高粘性(密度と粘性率の値は変数)の岩塊を設定し、スラブの自発的な曲げを考慮した粘弾塑性レオロジーを用いた高解像度の2次元沈み込み数値モデルを構築し、1500万年間にわたってフィリピン海プレートを沈み込ませた。数値シミュレーション結果を、沈み込み方向に沿って紀伊半島を横切る鉛直面内での地震波トモグラフィー、現在のスラブ形状、及び地震活動分布と比較した。その結果、大陸プレート内に局在する高密度・高粘性物質の存在により、フィリピン海プレートの沈み込み角が高角になりうることが示され、現在のスラブ形状を説明しうるモデルの構築にも成功した。したがって、地震波トモグラフィーによって特定された高密度で、かつ高粘性の可能性のある岩塊は、紀伊半島直下でのフィリピン海プレートの低角の沈み込みを阻害し、高角の沈み込みを引き起こす可能性があると結論づけられた。