日本語要旨

日本における岩盤深度:ボーリングデータと数値標高モデルを用いた地形解析による知見

本研究では、広範なボーリングデータと、10mまたは30mグリッドの数値標高モデル(DEM)から得られた傾斜等の地形量に基づき、日本における岩盤深度(DTB)と地形・地質の関係に関する統計解析を行った。ボーリングデータは、国土地盤情報センター(NGIC)から2024年5月時点で一般公開されていたデータを用い、ボーリング位置が正確と思われるログの抽出、代表的なサイトの選定、主要河川の堤外地や人工改変地のボーリング地点の除外を行い整理した。岩盤深度は、ボーリングデータのXMLファイル内のテキスト検索と手作業による精査によって推定し、その結果、約3万点の包括的なデータセットが得られた。基盤地図情報数値標高モデル(国土地理院)から再構成したDEMを用いて、斜面傾斜、TPI、最寄り落水線からの比高(HAND)、尾根谷密度等の地形量と、地形分類図を作成し、岩盤深度の推定値と統計的に比較した。
本研究で得られた成果は、岩盤まで達していないログの多さとボーリング位置の偏りのため暫定的なものではあるが、いくつかの重要な知見を明らかにしている。地形区分毎に求めた岩盤深度と斜面傾斜の中央値の間には強いべき乗関係(R² = 0.87)が観察された。山地(地すべり地を含む)では、岩盤深度の中央値は約3~4mであり、急斜面でも10mを超える大きなばらつきが見られた。堆積岩類による山地では、岩盤深度は塊状岩盤に比べて層状岩盤の方が深かった。丘陵性山地では、下部谷壁斜面にあたる比較的低位の斜面ほど岩盤深度が浅く、表層崩壊の影響を受けている可能性がある。一般に、岩盤深度の上限値は斜面傾斜と逆相関していたが、山間部では斜面傾斜が緩やかなほど上限値が少し低下しており、表層崩壊による堆積物の除去の影響が示唆された。同じ斜面傾斜帯では、岩盤深度が浅いボーリングサイトほど頻度が高かった。個別の斜面における地形と岩盤深度の関係にはばらつきがあるものの、統計的な特徴をさらに明らかにすることにより、将来的なモデリングに役立つことが期待される。