2011年噴火後のナブロ火山(エリトリア)の沈降の原因は何か?
- Keywords:
- InSAR, Time series, Atmospheric Correction, Subsidence, Viscoelastic modelling, Outgassing
火山学における重要な目標は、地表面における観測から火山システムの物理的特性に制約を与えることである。噴火後の火山システムの振る舞いは、これらの特性に強力な制約を与えると共に、将来の災害を理解するための貴重な情報源ともなる。我々は、2011年6月12日のナブロ火山(エリトリア:エチオピアの北に位置する)の噴火後に観測された時空間的に密な地表変形データから地下にある火山システムの力学に制約を与えた。ナブロ火山は、噴火後の15ヶ月間、TerraSAR-XおよびCOSMO-SkyMed衛星によって129回撮影された。ナブロ火山における視線方向距離変化の詳細な時系列データを作成することにより、その間火山が速度を減少させつつ沈降していることが分かった。観測されたSARデータの解析において、標準的な時空間フィルターを適用しただけでは、大きな気象学的ノイズが残ってしまうことが分かった。標高に応じた経験的な補正を行うと、気象学的ノイズを取り除くことができるが地形と相関した変動成分まで取り除いてしまう。そこで、ECMWFによって作成されたERA-Interimと呼ばれる全球的気象モデルを用いて、個々のSARデータに適切な補正を加えた。補正された時系列データは、深さ6.4 ± 0.3 kmに茂木モデルの収縮するソースを置くことでモデル化することができる。また、マグマが圧縮性であれば、マグマ溜まりを取り囲む球殻の粘弾性緩和によっても説明が可能である。二酸化炭素ガスの放出も沈降の原因となり得る。一方、冷却や結晶化作用による収縮の影響はおそらく小さい。ナブロ火山で、噴火後にマグマの再注入が起こっていたとしても、その速度は噴火後の緩和過程よりも遅い。噴火前に膨張が見られなかったことと合わせて、ナブロ火山へのマグマの注入は、検出限界よりも遅い速度あるいは間欠的に起こっていると考えられる。本事例研究は、火山における長期間の密な時系列データの威力を示している。