日本語要旨

MUレーダー・無人航空機・気球を用いたShUREX2015キャンペーンによる下部対流圏の鉛直構造

2015年6月に信楽MU観測所で実施されたShigaraki UAV Radar Experiment (信楽無人航空機レーダー実験; ShUREX2015)キャンペーンでは、無人航空機(UAV)、気球、レーダーによって下部対流圏における大気パラメータの鉛直プロファイルが同時観測された。本研究は、主に、下部対流圏の微細構造や力学の研究に、これら3種類の測器を組み合わせることの有用性を実証することを目的としている。キャンペーン期間中に、連続運用されたMUレーダーの近傍で、気象センサーを搭載したUAVと気象気球により同時観測されたデータを集中的に解析した。UAVはレーダーからほぼ一定の水平距離(約1.0km)を保って、らせん状に上昇・下降し、MUレーダーサイトから放球された気球は、データを比較した高度範囲(0.5~4km)において風により3~5km移流した。UAVとラジオゾンデで得られた気圧、気温、湿度データから、Brünt-Väisälä振動数N2や屈折率鉛直勾配M2の鉛直プロファイルが分解能20mで計算された。MUレーダーによって観測された鉛直サンプリング20mのエコー強度からも、M2プロファイルが様々な時間分解能(1~4分)で計算された。気球とMUレーダーで得られた風速および風速シアSから高度分解能150mでリチャードソン数(Ri = N2 / S2)が計算され、両手法で得られたRiプロファイルは全高度で一致した。3種類の測器すべてが、10mスケールの成層大気の顕著な温度・湿度勾配を検出していた。これらは、少なくとも数kmの水平スケールを有しており、数時間持続し、乱流拡散が弱いことを示していた。UAV、気球、レーダーから得られたN2とM2のプロファイルに顕著な不一致が、高度範囲1.80~2.15kmにおけるケルビン・ヘルムホルツ(KH)シア不安定によって生成された乱流層内でみられた。この不一致の原因は、KH渦のステージに依存していた。