北太平洋表層堆積物中の珪質鞭毛藻群集:モダンアナログ法による氷期日本海の海表面水温復元への応用
- Keywords:
- Silicoflagellates, North Pacific, Japan Sea, Sea surface temperature, Modern analog method, Last Glacial Maximum, Tsushima Warm Current
珪質鞭毛藻は珪質骨格を持つ植物プランクトンである。古水温復元を目的として北太平洋広域で採取した195点の表層堆積物中の珪質鞭毛藻群集の地理分布を調べた。本研究で同定した珪質鞭毛藻7タクサの北太平洋表層堆積物試料中の相対産出頻度(%)と現在の年平均表層水温の対応に基づき、2本の日本海海底堆積物コア(北海道沖と福井沖)中の珪質鞭毛藻群集組成変化から、モダンアナログ法を用いて最終氷期最盛期(26500年前~19000年前)以降の海表面水温を復元した。大陸氷床の発達に伴う海水準低下によって低塩分化が進んだ最終氷期最盛期の日本海では地球化学的な古水温計が使用できないが、本研究で確立した珪質鞭毛藻モダンアナログ法を利用することにより最終氷期最盛期以降の連続的な水温変化を復元することができた。復元した25000年前~15000年前の氷期日本海の年平均海表面水温は、北海道沖と福井沖の両海域で約5°Cとなり、最終氷期最盛期の亜寒帯前線が顕著に南下していたことを示していた。最終退氷期の海表面水温上昇は福井沖で約14000年前、北海道沖で約10000年と時間差があった。この南北の時間差は、東シナ海から対馬海峡を通じて流入する対馬暖流の流量が徐々に増加していったことを示唆する。