日本語要旨

数値シミュレーションを利用した津波警報の解除方法の提案

津波による被害が懸念される時には津波警報が発令される.津波の予測には到着時刻,最大波の予測に加えて,警報の解除に関係する津波の収束時刻の予測も重要である.警報が解除されれば,津波被災地区での救助活動が本格化される.早すぎる警報の解除は救助者を危険にさらし,不必要に長い警報は救助活動の妨げになる.本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震および2010年チリ・マウレ地震による津波の長時間シミュレーションを実施し,津波の減衰過程の予測精度を評価した.精度評価のために日本の検潮所で観測された津波データを用い,観測データと計算データの移動二乗平均平方根(津波振幅波形)を計算して比較した.長時間の津波シミュレーションは数値不安定性や計算負荷の面で困難が伴うが,太平洋全体を計算領域として2011年東北地震では60時間,2010年チリ地震では80時間分の津波計算を実現した.感度解析から,津波の非線形性と検潮所付近の計算格子間隔が津波の減衰予測に影響することが明らかになった.観測と数値計算から予測された津波警報の解除のタイミングの残差は,標準偏差で約4.5時間とほぼ一致したが,注意報の解除時間については,いくつかの観測点でうまく予測できなかった.また,1707年宝永地震の断層モデルから計算された津波に対して,本提案手法により見積もられた津波警報解除のタイミングは,地震発生後約1日となった.