火山弧の移動が記録する西南日本の時計回り回転とイザナギ-太平洋海嶺の沈み込み履歴
- Keywords:
- Izanagi plate, Pacific plate, Ridge subduction, Arc migration, Granite, Radiometric chronology, Continental block rotation, Slab shallowing, Magmatic hiatus
西南日本に分布する白亜紀の火成岩体は、中央構造線に平行な方向に西から東へと若い年代を示し、マグマ発生を伴う熱源としての拡大海嶺の斜め沈み込みとその移動に対応していると解釈されてきた。しかし、近年の海洋プレート運動に関する研究は、拡大海嶺の沈み込みの時期は白亜紀ではなく古第三紀であった可能性がより高いことを示している。日本列島の白亜紀および古第三紀の火成岩類から1227試料の年代測定結果をコンパイルした結果、火成活動は130–60 Maの初期活動期(ステージ1)、60–46 Maの活動休止期(ステージ2)、そして46 Ma以降の再活動期(ステージ3)に分けられることが明らかとなった。西南日本では、ステージ1と3の火山弧が約20°の斜交した関係にある。ステージ2での火成活動の停止と、その前後でのアダカイト質および高Mg安山岩質マグマの出現は、拡大海嶺の沈み込みが白亜紀ではなく古第三紀のステージ2で起こったことを示している。また、シホテアリンまで含めた火成活動の停止の広域的な同時性は、海嶺の沈み込みが海溝に対して低角度であったことを示す。ステージ1における火成活動の年代空間分布は、沈み込むスラブの若化による沈み込み角度の減少によって説明される。そして、ステージ1と3で形成された火山弧の斜交は、海嶺沈み込みとほぼ同時期に西南日本の内帯が時計回りに20°回転したことで説明される。沈み込む海洋プレートの運動方向は、海嶺沈み込み期の前後で左斜め沈み込みから右斜め沈み込みへと反時計回りに変化しており、上記のマイクロプレート回転に寄与したと考えられる。推定されたテクトニクス史は、ユーラシア大陸東縁部での拡大海嶺の沈み込み履歴を火成岩類形成だけでなく広域的な堆積盆形成や古地磁気学データに示される地殻ブロックの回転の履歴と関連づけて理解する枠組みを提供する。