日本語要旨

応力変化と余効すべりの双方によって駆動された2011年東北地方太平洋沖地震の余震活動

余震活動は地震活動の基本的な特徴の1つであり、その発生メカニズムは主に大地震による応力変化と余効すべりによる応力載荷の2つの物理モデルで特徴付けられる。しかし、余震発生におけるそれぞれのメカニズムの寄与は明らかにされていない。本研究では、2011年東北沖地震発生後約10年間の地震活動に対して、階層時空間ETAS(HIST-ETAS)モデルを適用することにより余震活動の特徴について調べた。本モデルを用いて、余震活動を非地震性の現象によって発生した背景地震と他地震によって引き起こされた誘発地震に分類した。本震時の大すべり域の浅部延長で発生した日本海溝軸付近の地震のほとんどは誘発地震であり、この地域で余効すべりが測地観測によって検出されていないことと調和的である。逆に、本震の大すべり域の深部延長では長期的に背景地震活動が卓越しており、余効すべりの時間発展と正の相関を示す。本研究の結果は、余震活動を説明するのに、2つの対照的な物理モデルを組み合わせることの重要性を示唆しており、余効すべりと余震活動の時空間分布の関係に新たな洞察を与える。本研究における背景地震と誘発地震の分類手法は、特に測地観測網が十分に整備されていない地域において、大地震後の余効すべり検出に貢献することが期待される。