南関東の前弧海盆の分化と侵食: 鮮新-更新統のテフラ層序と生層序による年代制約
- Keywords:
- Forearc basin fll, Kazusa group, Kurotaki unconformity, mass-transport deposit, Miura group, Pliocene, submarine landslide, tephra bed, Calcareous nannofossil
南関東には後期中新世から更新世の前弧海盆堆積物が分布し,房総半島や三浦半島などに広く露出する.これらの前弧海盆堆積物には「黒滝不整合」として認識されてきた年代間隙が存在するが,その層序学的な実態は明らかでなかった.著者らは鮮新統~下部更新統に挟在するテフラ層の層位,火山ガラスの岩石学的特徴と化学組成,およびテフラ対比の検証のため石灰質ナノ化石層序を検討した.その結果,逗子層最上部(三浦半島)のテフラ層Ngが清澄層(房総半島)のKy25に対比可能であることが明らかとなり,それぞれの上位にあるテフラ層NtとKy26の対比が裏付けられた.また池子層(三浦半島)のMammoth逆磁極亜帯上限付近に挟在するテフラ層IkT16 とIkT19が安野層(房総半島)のテフラ層An157.5とAn158.5にそれぞれ対比された.さらに,浦郷層(三浦半島)のテフラ層Ahnが黒滝層(房総半島)のOnrに対比可能であることが明らかとなった.安野層最上部と池子層下部には層理面にほぼ平行な侵食面が存在し,これは層厚数10 cmの不淘汰な砂礫岩層や凝灰質砂岩や泥岩などからなる海底地すべり堆積物(最大層厚60 m)に覆われる.そして,この侵食面を境に,三浦半島や房総半島東部では清澄層最上部から安野層の大部分(450から320万年前)に相当する層準が欠如していると考えられる.上総層群の層厚変化を考慮すると,隆起帯の成長により前弧海盆が東西に分化する過程で,320万年前に海底地すべりが生じ,その後上総層群が下位層へオンラップすることで「黒滝不整合」が形成されたと考えられる.