日本語要旨

北陸冬季雷におけるガンマ線グロー発生時の総観気象場

雷雲あるいは雷放電における強電場領域では電子が相対論的なエネルギーまで加速され、高エネルギー光子が生成されることがある。雷雲の準定常的な強電場によって生じる高エネルギー現象はガンマ線グローと呼ばれ、これまで飛翔体、高山、および地上実験によって観測されてきた。特に北陸冬季雷は雷雲の形成高度が夏季に比べて低いため、大気中で減衰されやすい高エネルギー粒子が比較的減衰を受けずに地上で検出できる。北陸冬季雷での高エネルギー現象を観測するGROWTH (Gamma-Ray Observation of Winter Thunderclouds) コラボレーションでは、2016年10月から2020年3月にかけて石川県金沢市と小松市で、ガンマ線グローを 70 イベント検出した。本研究ではガンマ線グロー検出時の総観気象場について、地上天気図、500 hPa高層天気図、数値予報モデル、地上観測および気象衛星観測を参照して調査した。検出事例のほとんどで、観測サイト上空の風向は西または西南西であった。グロー検出時の総観気象場は凸型等圧線型、極低気圧型、小低気圧型の3つのタイプと、寒冷前線型、山雪型の2つの例外事象に分類できた。特に半数以上が凸型等圧線型に分類され、このとき多くの事例で500 hPaのトラフまたは寒冷低気圧の通過と対応していた。また検出事例に加え、金沢市における冬季雷発生時のガンマ線グロー非検出事例を抽出し、検出事例と比較した。一部の非検出ケースはグロー検出ケースと同様の気象条件であったが、非検出ケースのほとんどにおいて地上と850 hPa面で気温が高く、-10℃高度も高かった。したがって、非検出事例においてもガンマ線グローが発生した可能性はあるが、地上に到達する前に大気中で減衰し、地上では検出できなかったと考えられる。