フィリピン海プレートの海溝周縁隆起帯上に位置する北大東島の隆起速度
- Keywords:
- Kitadaito Jima, lithospheric forebulge, Philippine Sea Plate, uplift rate, Sr isotope stratigraphy
海溝周縁隆起帯の隆起速度は、プレート収束帯での正確なプレート運動を理解するとともに、サンゴ礁の生涯を明らかにするために必須の情報である。海溝周縁隆起帯の炭酸塩島は、炭酸塩堆積物の年代測定や古水深の決定が可能であるため、隆起速度を推定するための優れた記録者である。そこで、ユーラシアプレートの下に沈み込むフィリピン海プレートの海溝周縁隆起帯上に位置する北大東島の隆起速度の推定を行った。同島の頂上付近の標高約71 m地点(北大東島灯台露頭)で、潮間帯浸食ノッチの凹部を埋める炭酸塩生物殻より構成される礫質堆積物を発見した。この堆積物から1.78〜2.01 Maというストロンチウム同位体年代が得られた(平均=1.89 Ma、標準偏差=0.07 Ma)。1.89 Maの海面は現在より約21 m低いことから、平均隆起速度は約49 m/Myr(± 2.6 m/Myr)と見積もられた。この速度は、同様のテクトニックな位置にある他のインド-太平洋域の炭酸塩島で報告された速度に匹敵するか、あるいはそれよりも最大で140 m/Myr小さい。本研究は、最新のSr同位体年代モデルと石灰岩試料の堆積深度を慎重に検討することにより、従来の研究に比べ正確かつ高精度で海溝周縁隆起帯の速度を求めることができることを示している。