日本語要旨

沖縄トラフにおける熱水中のSr同位体比:海底熱水系の堆積物の多様性と熱水循環モデルの解析

本論文では、沖縄トラフで見つかっている複数の海底熱水系の海底熱水中のSr同位体比を調べ、これまで報告されている海底熱水系の中で、最も高い値を示すことを明らかにした。高いSr同位体比は、堆積物が被覆しているタイプの海底熱水系では一般的である。しかし、堆積物は炭酸塩、ケイ酸塩、有機物など多様であり、Sr同位体比を高くしている要因については、あまり考察が進んでいなかった。本研究では、これまでに報告されている個々の構成物のSr同位体比から、海底熱水系のSr同位体比を高くしている要因を考察し、ケイ酸塩鉱物からの寄与が大きいことを示した。また、熱水循環系の高温反応領域での海底堆積物の分布の違いによって、多様なSr同位体比を取り得ることを示した。今後、さらにホウ素同位体比やリチウム同位体比を調べることで、本モデルの妥当性が検証され、海底下における物質交換反応の素過程が明らかになることが期待される。