流体と地球の物理化学的特性とプロセス
- Keywords:
- 流体、溶解度、熱力学、物質輸送、浸透度、空隙率、ぬれ角
地球の流体には、フッ素や塩素などのハロゲンとともにC–O–H–N–S 系の化学種が含まれている.流体に含まれるこれらの化学種の中で H2O は群を抜いて豊富である。H2Oに富んだ流体は、流体とマグマという地球内部の 2つの主要な物質輸送媒体の1つである。この水流体は、高温高圧下で地球化学的に重要な成分の効果的な溶媒となる。水溶液の溶解度は、溶存するハロゲンと硫黄によってさらに増加する。 CO2 と窒素種はその反対の効果すなわち溶解度を減少させる。
地球における流体を媒介する物質輸送は、浅い場所では亀裂を通し、より地下深くでは粒界に沿った浸透による。浸透速度は浸透率に関係しており、浸透率は岩石の空隙率によって支配される。空隙率は、流体と鉱物表面の界面でのぬれ角 θ によって制御される。θ < 60°の場合、流体は等方性結晶材料のすべての粒界を濡らすが、60°を超えると、粒界の濡れが容易に起こらず、流体を介した輸送効率が大幅に低下する。ぬれ角の大きさは、流体中のケイ酸塩成分の溶解度と負の相関がある。つまり、流体の組成、温度、および圧力はぬれ角に影響し、したがって、地球内部の流体を介した物質輸送効率に影響する。
地球内部の地球物理学的および地球化学的異常は、流体の存在に関連している。地殻やマントルの岩石に流体が浸透すると、電気伝導度と地震波の減衰が大きくなる。たとえば、電気伝導度の増加によって、沈み込むプレートの上のマントルウェッジ内に 5 ~ 10% の H2Oに富む流体が存在することが示唆されている。このような量の流体の存在は、これらの地域の地震速度と矛盾しないことも示されている。地殻とマントルの化学組成は、主要元素、微量元素、および超微量元素の流体を媒体とした物質輸送によって影響を受けている。そのように変質した物質が部分溶融マグマの源岩になる場合、地球化学的な変質作用は部分溶融マグマの組成に変化を引き起こす。一例として、沈み込んだスラブ上部のマントルウエッジにスラブの脱水由来の水流体が存在することは、沈み込んだ海洋地殻上部の含水マントルウエッジの部分溶融と矛盾しない。