DigitSeis: アナログ地震記録からデジタル時系列を抽出するソフトウェア
- Keywords:
- analogue seismograms, digitization, DigitSeis software
1800年代後半に始まった地震計による観測は、自然および人為的に生じる地球の揺れ(地震,火山噴火,核爆発など)や地球の内部構造に関する研究を可能にし、地震学および地球科学の分野の基礎を築いてきた。1980年代半ばまでのデータは紙やフィルムなどのアナログ媒体で記録されており、急速な経年劣化や膨大な量の記録紙の廃棄などの危機的状況にある。これらのデータは、大規模または異常な地震などの従来のターゲット以外にも長期観測が必要な地震のサイクルや地球温暖化による台風の変動などを解明する可能性を秘めている。よって、効率的なソフトウェアによる速やかなデジタル化は不安定で貴重なデータの保存を推進するだけではなく、新しい研究分野を開拓する切り札である。
この論文では、アナログ地震記録のデジタル画像を、位置関数または振幅の時系列に変換するソフトウェアDigitSeisの構成、使用方法、課題などを記述し、有効性を幾つかの例で実証する。図1は日本語版DigitSeisのスクリーンショットを表示している。デジタル化には幾つかの過程があり、画面左側のボタンと上部のツールバーを使って操作していく。この例では1945年7月15日から16日にかけてアリゾナ州ツーソンで観測された地震記録を分析し、世界最初の原子爆実験による地震波のデジタル化に成功している。図2は1966年12月19日にCOL観測所(アラスカ州カレッジ)の地震記録の一部であり、画像のみでは地震による揺れが二箇所あるのが分かるものの、波形の特徴は掴むことはできない。しかし、デジタル化された線が画像に重ねられると、二つの波形の顕著な類似性が明らかになる。波形はほぼ一致し、振幅もほぼ同じであることから、この二つの地震が双発地震であることが分かる。このように、デジタル化された時系列があれば、テンプレートマッチングなど最新の波形解析技術を使って地震を検出したり、滑りの分析を行うことが可能になる。
DigitSeisは無料で公開されており、誰でもダウンロード可能である。(http://seismology.harvard.edu/research/DigitSeis.html)。