全海洋Nd収支に対する河川粒子状物質の寄与評価の向上
- Keywords:
- Particulate release, Nd budget, Rare earth elements, Changjiang estuary
大陸縁辺部における粒子からのネオジム(Nd)の放出は、地球規模でのNd収支の欠乏に寄与している可能性が高い。全懸濁態物質の含有量が多い長江は東シナ海に流入しており、塩分勾配に沿って強い粒子-海水相互作用が起こっている。低塩分域(S < 2.0)では、溶存希土類元素(dREE)の除去が強く起こるが、Nd同位体比は一様である。一方、中・高塩分(それぞれ,S = 2.0〜28.0, S > 28.0)域では、dREE濃度がわずかに上昇する。Nd同位体比のマスバランスから、長江河口域において粒子状物質の放出がdREEの供給源であることが示された。長江河口域における粒子状Nd(Nd-SPM)の溶存Ndプールへの放出率は、アマゾン河などの他の河口域より高い。これまでの研究で得られたすべての河川データを総合すると、年間5800-9200 MgのNdが河川粒子によって世界の海洋に放出されていると推定される。この推定量は、アマゾン河口域でのケーススタディに基づいて計算されたグローバルNd放出フラックスと同等のオーダーである。本研究は、全球のNd収支をより正確に把握するため、河川ごとのNd-SPM放出率が大きく異なることを考慮する必要があるにもかかわらず、現状全球で利用可能なデータが非常に限られており、更なる研究の必要性が高いことを指摘した。