棘をもたない浮遊性有孔虫2種 Neogloboquadrina dutertreiとPulleniatina obliquiloculataにおける栄養ニッチの違い
- Keywords:
- amino acid, herbivore, nitrogen isotopic composition, omnivore, planktonic foraminifers, trophic position
飼育観察では浮遊性有孔虫は雑食性であり,植物プランクトンと動物プランクトンを食べることが報告されている。特に,棘をもつ種は植物プランクトンよりも動物プランクトンを採餌する傾向がある一方,棘をもたない種は植物プランクトンを採餌する傾向にあると言われていた。しかし,自然環境での浮遊性有孔虫の栄養活動や海洋食物網における栄養段階については十分に理解されていない。そこで本論文では,棘をもたない浮遊性有孔虫2種Neogloboquadrina dutertreiとPulleniatina obliquiloculataについて,2種類のアミノ酸(グルタミン酸とフェニルアラニン)の窒素同位体比の違いを利用した栄養段階(TP)の推定を試みた。その結果,N. dutertreiのTP値は約2.4で雑食性を示し,P. obliquiloculataのTP値は約2.1で藻食性であることを示した。先行研究の飼育観察とこれらのTP値を合わせると,N. dutertreiがデトリタス食または腐食であるのに対し,P. obliquiloculataは藻食であることが示唆される。この栄養ニッチの違いは,両種が外洋水柱の同様の深度帯に共存することを可能にするとともに,生体群集や堆積物群集における相対頻度の時空間変化の原因を探るうえで手がかりを与えると期待される。