フィリピン島弧系の重力データの強調とインバージョンによる地殻の特徴とMoho深度のイメージング
- Keywords:
- World Gravity Map (WGM), Philippines, Two-dimensional (2-D) radially averaged power spectrum, Three-dimensional (3-D) gravity inversion, Basement and Moho depths, Basin
フィリピン群島は複雑な島弧系であるが,多くの地域で重力探査の実地調査がまだ行なわれていない.この論文では,フィリピンの重力シグナルを総括し,その地域地質とテクトニクスの理解に貢献するため,世界重力地図の高解像度なアイソスタシー異常とフリーエア異常のデータ処理および解析を行なった.またアイソスタシー異常マップは,高密度のオフィオライト質基底岩と深部の低重力堆積盆を調査するために,重力探査データのフィルタ処理法である上方接続処理が施された.また,密度コントラスト境界で表されるローカルな地質構造を見つけるために,フリーエア異常マップに一次垂直微分フィルタを適用した.なお,スールー海におけるモホ面頂部と基盤岩の深さは,2次元の放射状平均パワースペクトル解析により算出した.さらに,フィリピンの主要な堆積盆地に対して3次元重力インバージョンを適用し,地下の3次元密度コントラストモデルを提示した.ここで解釈された重力マップは,顕著な地質学的特徴(例えば,トレンチの発現,オフィオライトの分布,堆積盆の厚さ)を浮き彫りにした.具体的には,負のアイソスタシー異常(< 0 mGal)は厚い堆積盆を表し,中程度の異常(0-80 mGal)は変成帯に相当する.また,80 mGal以上の超高重力異常はオフィオライト質基盤岩に相当する.重力データの上方接続によって,フィリピン中央部の大陸性(20-35 mGal)と海洋性(45-200 mGal)の地域が区別され,深部重力シグネチャーのコントラストが明らかになった.さらに,スールー海の垂直一次微分マップには,カガヤン海嶺を中心とした浅い地形に関連した異常が見られた.加えて,2次元放射状平均パワースペクトル解析により,テクトニックな意義のある重力異常(基盤特性,モホ深度の推定など)を明らかにした.これらの結果から,スールー海における平均モホ深度は12〜22 km,平均基底深度は5〜11 kmと推定された.最後に,3次元地下密度モデルにより,カガヤン渓谷北部と中央ルソン盆地南部の深い(7 km以上)堆積盆を表す超低密度ゾーンが特徴づけられた.さらにアグサン・ダバオ盆地北部とコタバト盆地東部の低密度地域では,薄い層厚(〜3.5 km)の堆積層が推定された.