地中レーダ探査によって明らかとなった中央構造線池田断層の最新活動に伴う右横ずれ変位量
- Keywords:
- Median Tectonic Line (MTL), Active fault, Ground-penetrating radar (GPR), 3D modeling, Earthquake geology
中央構造線断層帯は,南海トラフにおけるフィリピン海プレートとユーラシアプレートの斜め収束のうち,島弧に平行な右横ずれ成分のほとんどを解放している島弧中央横ずれ断層である.四国陸域の中央構造線断層帯の右横ずれ変位速度は5〜10 mm/yrであり,これは日本列島の内陸活断層で観察される最も大きな変位速度である.中央構造線断層帯で発生する大地震に伴う地表変位量を明らかにするために,四国東部の池田断層上で,2次元および多数の平行な2次元断面の重ね合わせによる擬似3次元地中レーダ探査を実施した.調査地は,既存の研究により河岸段丘崖の右横ずれが認定されている徳島県三好郡東みよし町山口である.断層に直交および平行な2次元探査の測線長は約28〜64 mである.擬似3次元探査は,断層の通過位置を中心に,20 m×30 mの範囲について平行測線間隔0.5 mで行った.探査には中心周波数50 MHzの送受信アンテナを使用し,地中電磁波速度を算出するためにワイドアングル測定も実施した.解析によって得られた深度変換断面図では,断層に直交して南方へ流れた3つの旧流路堆積物が認定された.深度0.6〜1.4 mに分布する旧流路堆積物はすべての擬似3次元探査断面に現れており,この堆積物の分布の3次元モデルを作成することにより,この堆積物が約3.5 mの右横ずれ変位と約0.5 mの垂直変位を受けていることが明らかとなった.この変位量は,池田断層の最新活動に伴うこの地点での地表変位量を示していると考えられる.本研究によって,地中レーダ探査により,活断層の最近の活動に伴う横ずれおよび縦ずれ変位量を見積もることが可能であることを示すことができた.