地球に影響を与える太陽トランジェント現象の解明:第24太陽活動周期における進展のレビュー
- Keywords:
- Coronal Mass Ejection, Interplanetary Coronal Mass Ejection, Solar Energetic Particle, Corotating Interaction Region, Flare, Corona, Sun, Geomagnetic Storms, Space Weather
地球に影響を与える太陽トランジェント現象の研究が、第24太陽活動周期のほとんどを含むこの10年でどのように進展したかをレビューする。これは2014年~2018年におけるSCOSTEP/VarSITIプログラム下のISEST (International Study of Earth-affecting Solar Transients)プロジェクトの一環として行われた研究に基づく。本論文で取り上げるのは、地球の宇宙空間にトランジェントな擾乱を直接引き起こす数分から数日の短い時間スケールの現象である。これには大きく分けて以下の4種類がある。(1)太陽フレア、(2)コロナ質量放出(CME)とそれに対応した惑星空間コロナ質量放出(ICME)、(3)太陽高エネルギー粒子(SEP)現象、(4)共回転相互作用領域(CIR)を含むストリーム相互作用領域(SIR)。最も際立った成果として、STEREO探査機と太陽-地球線に沿った一連の観測機器の組み合わせにより、太陽の多視点観測が初めて可能になったことが挙げられる。これにより、CMEの大きさ、速度、伝播方向、形態を、3次元的に、かつ太陽圏の広い範囲で、より正確に測定できるようになった。多くのCME、特に高速のCMEで、衝撃波と噴出物による2つのフロントと3部構造(明るい噴出物フロント、暗い空洞、明るい核)を明確に識別できるようになった。太陽から1 AUの距離におけるCMEの到着時間を予測するために、抗力に基いた運動学モデルだけでなく、いくつかの先進的なMHDモデルも開発され、CMEの発生から太陽圏での伝搬の現実的なシミュレーションが可能になった。また、ステルスCMEや起源不明のICMEなど、簡単でないトランジェントの詳細な運動学的・力学的な振る舞いについても多くの知見を得ることができた。SEPに関する理解も大幅に向上した。本稿のまとめとして、地球に影響を与える太陽トランジェント現象研究に関して、今後の見通しを議論する。