日本語要旨

医療用X線CTを活用した主要断層帯の最低密度領域の定量的認定

第四紀の被覆層のない基盤岩中に発達する断層破砕帯の中でも最新活動領域を抽出することは,断層の活動性の評価やスリップデータから求められる最新応力場の復元および地震防災の観点からも重要である.断層帯の隆起・削剥を考慮すると,断層の最新活動領域は,最も浅い深度における地震活動の痕跡に対応すると考えられることから,断層岩において最も脆弱な領域,換言すれば母岩に対する密度低下が最大の領域であることが想定される.しかし,断層岩の密度を測定することは容易ではないことから,筆者らは,物質の3次元内部構造に関するデータを非破壊で簡便に取得できる医療用のX線CTを活用し,密度と有効原子番号の関数であるCT値から断層帯の最低密度領域を認定することを試みた.

筆者らは,活断層および非活断層の断層露頭の基盤岩中で採取した断層岩およびそれぞれの母岩 (堅岩) を対象とし,まず,断層岩の密度,空隙率を測定し,XRF分析結果より有効原子番号を算出した.次に,医療用CTを用いて取得したCT画像から線質硬化の影響を軽減したCT値を算出し,CT値,密度および有効原子番号の関係について検討した.その結果,筆者らは,断層岩の密度,有効原子番号およびCT値は,露頭観察により認定した最新活動領域に近づくにつれて減少すること,断層の最低密度領域はCT値および堅岩に対する密度比が最も小さい領域として認定できることを明らかにした.さらに,最低密度領域と最新活動部との関係について検討した結果,断層の露頭観察および断層ガウジの微小構造観察と組み合わせることにより,CT値から認定した最低密度領域から最新活動部を推定できる可能性があることが示された.