断層岩の炭酸凝集同位体温度測定とその可能性:ヒマラヤ前縁褶曲-衝上断層帯中に含まれる方解石からのテクトニックインプリケーション
- Keywords:
- Carbonate clumped isotope thermometry, Calcite twin thermometry, NT, MBT
断層岩形成時の温度と形成深度を明らかにすることは、断層岩のレオロジー、エクスヒューメイション、断層帯の進化過程を理解する上で非常に重要である。多くの場合、断層岩形成の温度を推定するために、変成鉱物を用いた地質温度計や元素分配を利用する方法が採用されている。しかし低温条件で発達する地殻深部の断層岩では、この方法は利用できない。本論文では、インド北西部に露出するヒマラヤ前縁褶曲-衝上断層帯中に含まれる炭酸塩脈を構成する方解石に対して、炭酸凝集同位体温度計を用い形成温度を求め、その温度の妥当性を検証した。その結果、方解石の炭酸凝集同位体温度計と方解石のe-twin形態を比較することにより、本調査地域を構成する2つの主要な衝上断層であるナハン衝上(170±10℃、深さ6-7km)と主境界衝上断層(262±30℃、深さ10-11km)の形成温度と深さを求めることができた。本研究が提唱する炭酸塩脈を構成する方解石を用いた炭酸凝集同位体温度計は、地殻浅部の断層形成の温度見積もりに有効で、今後多くの断層帯において、断層形成深度(約10km)から地殻浅部に至る断層形成モデルのより精密化を行うことが可能になると考えている。