積雪地域における土壌雨量指数の適用: 日本における感度分析とトムスク(ロシア)への予察的適用
- Keywords:
- Soil Water Index (SWI), Landslide prediction, Snowmelt-driven landslide disaster, Hourly precipitation, Tomsk
土壌雨量指数とは土壌中に含まれている概念的な水量を表しており,時間降水量を入力として3段直列のタンクモデルによって計算される.日本においては,ある場所の土壌雨量指数が過去10年間の最大値を超える時に土砂災害が発生しやすいと言われている.しかしながら,融雪に伴う土砂災害の発生についてはこれまで十分に検討されてこなかった.そこで筆者たちは,土壌雨量指数と流出量を同時に計算できるタンクモデルを用いて,オリジナルの土壌雨量指数に降雪-積雪-融雪過程を導入した.そして,これをトムスク(ロシア)の2010年の気象データに適用した(トムスクでは2010年の春季に,融雪に伴う土砂災害と洪水が発生している).ロシアでは3時間ごとの気象データしか公開されていないため,まず,日本国内の積雪地域(融雪に伴う土砂災害の発生時期が明らかになっている新潟県関山地区)において,降水量の時間分解能に関する感度分析を行なった.AMeDAS関山において時間降水量から3時間降水量を求め,それを3等分したものを時間降水量として土壌雨量指数を計算したところ,観測された時間降水量から計算した土壌雨量指数とほとんど同じ結果が得られた.次に,AMeDAS関山における3時間ごとの気温観測値から毎時の気温を線形内挿して求め,これを用いて雨雪判別を行なった.さらに,degree-hour法を用いて融雪量を計算した.このように改良した融雪期(3~5月)の土壌雨量指数は,関山地区における融雪に伴う土砂災害の発生時期をよく再現していた.そして,その時の土壌雨量指数の値は,過去10年間の融雪期における土壌雨量指数の最大値を上回っていた.その後,トムスクにおける2010年の気象データを入力として,改良した土壌雨量指数と流出量を計算したところ,2010年の春季における融雪に伴う土砂災害と洪水の発生時期をよく再現していた.すなわち,過去10年間の融雪期における土壌雨量指数の最大値と比較することによって,融雪に伴う土砂災害の発生時期を予測できることが.実証的に示された.