日本語要旨

全球陸面モデルにおける永久凍土過程の改良と将来予測

永久凍土が関わる過程の定式化には様々な不確実性があるため、その重要性にも関わらず全球気候モデルで利用される全球陸面モデルでは取り扱いが簡略化されている。この研究では、土壌の凍結に伴う熱物理量の変化や、より現実的な土壌物理特性を考慮することにより、全球陸面モデルにおける永久凍土過程の改良を行った。具体的には、改良版では、凍結土壌の熱容量や熱伝導度、高緯度のツンドラ・タイガ域における空隙率の高い表層近くの有機層、氷点下での不凍水を考慮した。その結果、改良版では、冬季土壌水分の凍結が効果的に維持・増加されることにより、永久凍土域の南限でより現実的な永久凍土分布を再現することが可能となった(図1)。また、永久凍土過程は、将来の予測に大きな影響を与えることが示された。将来の永久凍土面積をRCP8.5(現在のペースで温室効果ガス排出が続く)シナリオにおいて予測したところ、従来版では2100年において 表層10m 程度以浅の60 %(40〜80%、複数の予測モデル結果を用いたばらつきの幅) 程度の減少という予測であったが、改良版では35% (同20〜50%) 程度の減少となった(図2)。このように、より信頼のおける予測のためには、永久凍土過程の改良が重要であることが分かった。

さらに、本研究で得られた将来予測の結果を、研究データの可視化を専門とする国立極地研究所の研究チームに提供することにより、将来の永久凍土面積変化予測をアニメーションで表示するweb ページ#を作成した。そこでは閲覧者が、表示する中心座標を操作して自由に変更できるので、表層付近の永久凍土がいつ頃どの地域で減る可能性があるのかを、研究者を含めた数多くの人々に、わかりやすく表現することが可能となった。

#: https://ads.nipr.ac.jp/node/dagik/?type=MIROC5/PERMAFROST_SEP