日本語要旨

地球温暖化時の海洋熱吸収と海洋循環による熱の再分配に伴う西部北太平洋の力学的海面水位変化

本研究では、地球温暖化時に北太平洋西部で将来発生が予測される海面変動における海洋熱取り込みと熱再分布の相対的な重要性を気候モデル(MIROC)を用いた実験で調べた。Flux-Anomaly-Forced Model Inter-comparison Project (FAFMIP; Gregory et al., 2016) の実験プロトコルに従って、地球温暖化時における風ストレス、熱、淡水の変化を海面フラックス偏差を気候モデルによる産業革命前のコントロールシミュレーション実験に与えた。その結果、亜熱帯熱帯モード水(STMW)の熱膨張に起因する北太平洋西部の力学的海面水位 (DSL)上昇を説明するためには、北太平洋全体の温暖化時の熱の海洋への取り込みと気候学的平均流による熱の蓄積が重要であることが示唆された。同時に、黒潮続流域の混合層形成に伴う局所的な熱取込みが、将来のSTMWの変化とそれに伴う循環に起因することが明らかになった。西亜熱帯北太平洋における将来のDSL上昇にとっては,風応力や塩分変化の寄与に比べて、ローカルな熱膨張成分の方が支配的な要素である。ただし、先行研究で報告されているように、温暖化時における北太平洋上の中緯度偏西風の北上シフトとその強化や、風応力の経年変動に対してDSLは線形的に応答する。