重力異常から明らかになった中部日本三河湾周辺におけるハーフグラーベンのインバージョン構造
- Keywords:
- Gravity survey, Inversion tectonics, Mikawa Bay Region, Nishi–Mikawa Plain, Chita Peninsula, Utsumi Fault, Takahama Fault, Basement structure, Half-graben, Central Japan, Genetic algorithm
中部日本に位置する三河湾地域は、第四紀に活動した活断層が多いことが特徴である。しかし、この地域では、厚い堆積物・堆積岩が基盤岩を被覆しているため、これまで地下の基盤の構造やその構造をつくりだした地殻変動を理解することは困難であった。本研究では、三河湾地域において重力データを解析し、本地域の基盤岩の上面深度とその構造を推定することにより、中新世に形成されたハーフグラーベン(半地溝)のインバージョン構造の可能性を初めて指摘した。解析に用いた重力データには、既存のデータベースに加え、西三河平野の高浜断層周辺を中心として新たに取得した稠密重力探査の観測結果を用いた。次に、重力データを用いて、知多半島から西三河平野におよぶ広域的な重力基盤上面のモデリングを実施した。これにより従来から指摘されていた、知多半島における大規模な基盤の凹みを確認した。さらに、遺伝的アルゴリズムを用いて詳細な二次元密度構造モデリングを実施した。これにより、知多半島の南西端の内海断層による基盤形状が、北西傾斜の正断層タイプの構造であることが明らかになり、知多半島南部地下の基盤の凹みは内海断層によるハーフグラーベンであることが明らかとなった。推定された内海断層の運動センスは、中新世の正断層から第四紀後期の逆断層へと反転しており、半地溝の反転を示唆するものであった。このような断層運動の反転、すなわち中新世の正断層の逆断層化のタイミングは、日本海東縁で観測された盆地反転のエピソードと比較することができ、日本列島の成り立ちを議論する上で重要な知見である。一方、西三河平野南西部の高浜断層は、南西傾斜の逆断層構造を示し、断層による基盤の食い違いの量は内海断層に比べて小さいことが明らかになった。この様な高浜断層の構造的特徴から、高浜断層は内海断層の逆断化に伴う反転テクトニクスのもとで形成されたバックスラストであると考えられる。もし、高浜断層が内海断層のバックスラストであるとすれば、高浜断層の深部延長は地震発生深度に達するほど深く、1945年の三河地震の震源域と関連している可能性がある。