日本語要旨

レユニオン正磁極亜期とオルドバイ開始境界を含む前期松山期の古地磁気記録:高解像度磁気層序と地磁気極性遷移期の詳細

本研究では、房総半島南端に分布する海成更新統の千倉層群畑層における層厚168 mの連続セクションから、レユニオン正磁極亜帯とオルドバイ下限境界を含む、下部松山逆磁極帯の新しい古地磁気記録を提示する。このセクションでは、レユニオン正磁極亜帯とオルドバイ下限境界が、それぞれセクション下限から38.6〜44.6 mの間と142.0 mの層準で確認され、レユニオン正磁極亜帯の上下境界間および、レユニオン上限境界からオルドバイ下限境界の間の平均堆積速度は、それぞれ25 cm / kyおよび57 cm / kyと算出された。これらの値は、数多くの高解像度地磁気逆転記録を提供してきたアイスランドベーズンの堆積層を凌駕する。

レユニオン上下境界における仮想地磁気極(VGP)経路は、双方ともアフリカ付近と重なる同様の経度帯を通過し、さらに上限境界の直下では、中国付近においてVGPが停滞するVGPのクラスターが見られた。レユニオン全体の相対古地磁気強度(RPI)値は、本研究の全体(レユニオン亜帯からオルドバイ亜帯下部までの間)の平均よりも概して低くなっていた。一方、オルドバイ下限境界におけるVGP経路は、特定の経度帯は通らず、いくつかの領域(南インド洋、北アメリカ、南アメリカ沖の南太平洋)にVGPのクラスターが見られ、VGPはクラスター領域間で急速に移動していた。 これらのクラスター領域の位置は、現在観測されている非地軸双極子による磁場鉛直成分が卓越する領域と一致しているように見える。オルドバイ下限境界では、VGPがクラスター領域間を急速に移動したことと、磁場逆転に伴いRPIは急速に低下し、逆転後はゆっくりと回復したことがわかった。これらの新しい古地磁気データは、海底堆積物から得られた地磁気反転の最も詳細な記録の1つであるため、地磁気反転のダイナミクスを理解する上で役立つと考えられる。