地球温暖化と環境問題の軽減のための短寿命気候汚染物質(SLCPs)の削減シナリオの開発
- Keywords:
- Short-lived climate pollutants, Global warming, Mitigation scenario, Climate Change, Air pollution, Environmental problem
本研究は、地球温暖化と環境問題を同時に軽減するための短寿命気候汚染物質(SLCPs)の最適な削減シナリオを探索するための環境研究総合推進費S-12プロジェクトに関するものである。本研究では、REAS排出インベントリー、アジア太平洋統合モデル-エンドユース(AIM/Enduse)、MIROC6 気候モデル、NICAM 非静力学大気モデル、および健康、農業、洪水リスクに関する影響評価モデルを用いる。様々なシナリオ探索の結果、地球温暖化と環境問題による被害の両方を同時に軽減するためには、二酸化炭素の大幅な削減とともに、CH4、SO2、黒色炭素 (BC)、NOx、CO、VOCと言ったSLCPの削減を注意深く組み合わせることが必要であることが明らかになった。このようなシナリオのデザインのためには、BCの削減による地表面気温の減少は小さいことや、CH4とNOxの削減に伴って大気化学上の複雑な負の相互作用が発生することを考慮する必要がある。その結果、我々は2つのシナリオ、すなわち 2度(2D)シナリオの実現には、除去対策技術(EoP)による大気汚染物質削減と緩和技術によるSLCP削減の組み合わせを考慮したB2aシナリオとB1cシナリオが有望であることを見出した。これらのシナリオでは、2050年までに0.33℃の気温上昇緩和と全球規模の大気汚染を軽減することができ、その結果、健康、農業、洪水の被害軽減につながることが期待される。また、アジアや大気汚染の激しい他の地域では、粒子状物質の大幅な削減によって局所的な高温域(ホットスポット)が形成されるために、大気汚染対策とともに暑熱による死亡被害を軽減する対策を同時に推進する必要があることが示された。もう一つの案としては、このような被害を引き起こすホットスポットが比較的抑えられるB1bシナリオを導入することも検討すべきである。