北日本における台風による降水の特性解析:2016年の台風の事例研究
- Keywords:
- Precipitation characterization, Precipitation size, Precipitation duration, Typhoon, Radar-AMeDAS
2016年は,台風の発生数および接近数はそれぞれ26個,11個と平年並みであったものの,上陸数が6個あり,2004年の10個に次いで上陸台風が多い年であった.6個の上陸した台風のうち,4個(台風7号,9号,10号,11号)が8月に北海道や東北地方の北日本に上陸した.これらの台風により,北日本の各地で豪雨が発生し,洪水など水害が発生するとともに,山間部での土砂災害も多発し,森林地域での被害も大きかった.北日本はそもそも台風の来襲頻度が高くないため,台風による大雨や暴風への耐力は一般に弱いと考えられる.特に森林への影響は顕著なものとなる.こういった北日本での台風のハザードを定量的に評価することは,今後の災害への備えを強化する上で重要である.そこで本研究では,2016年8月に北日本に上陸した上記の4個の台風を対象として,台風による豪雨の特徴を統計的に解析した.特に,70~99パーセンタイル値といった極端側の降水に着目し,台風に伴う極端降水の時空間特性や緯度別の違いについて調べた.対象とした台風のうち,北海道に上陸した台風については降水の継続時間に類似性があり,東北地方に上陸した台風については比較的長時間にわたり降水が継続していた.一方,台風に伴う降水域の大きさには,4個の台風で似通った特徴が見られた.このような特徴から,台風の北上に伴う降水の変化を見ると,台風が北緯38度線を越すと,北日本での降水量が増大し,特に台風中心付近およびその南北1度の範囲での降水量が顕著である.台風の北上に伴い,降水域も北に移動し,台風中心付近で降水量が急増するようになる.本研究は,観測データから台風による北日本への影響を豪雨という視点で調べたものである.本研究で示された観測事実は,気候予測データによる温暖化影響を調べる上でも,基礎資料として有用であろう.