中国レス層の松山–ブリュンヌ地磁気逆転における百年スケールの磁気・気候層序
- Keywords:
- loess-paleosol, geomagnetic reversal, Early‒Middle Pleistocene transition, loess magnetism, East Asian monsoon
陸成層から最後の地磁気逆転の詳細な記録が得られても、それに見合った高精度の年代モデルを作ることは難しい。この問題は、海洋酸素同位体ステージ19の千年スケールの古海洋イベントを年代制約として用いれば解決できる。本研究では、この方法を厚さ8mの中国黄土高原Lingtaiのレス層から得た高解像度古地磁気記録に適用し、松山–ブリュンヌ(MB)トランジション磁場変動の千年〜百年以下のスケールの特徴を明らかにした。すべての試料につき650–680℃までの14–15段階の熱消磁を行い、96%の試料から高精度の古地磁気方位データを得た。MBトランジションの最終部分は9回の極性反転を伴う厚さ75㎝の極性反転帯が占めた。その極性反転帯は温暖イベントIとJの間で始まり、双極子磁場強度の減少と同調した寒冷化の終了とともに終わった。その年代範囲は779–777 kaと見積もられた。ほとんどの極性反転は70年以内に起こっている。極性反転帯後半の短期間に、仮想地磁気極(VGP)は、ハワイおよびカナリー諸島の溶岩流とジャワの湖成層から得られたMBトランジションのVGPと同じく、南西太平洋地域に集中した。このことは、これら4つの地域のMBトランジションは短期間であるが双極子磁場が卓越していたことを示唆する。極性反転途中に中間極性をもつ古地磁気は皆無であった。このことはレスの磁化固着の深さ幅は薄く、レスの磁化が積分する磁場変化の期間は短いことを暗示している。南西太平洋VGPを示す磁化帯上限における逆から正の地磁気極性反転について778 kaの年代を見積もった。この層準は、MB境界層序の重要な鍵層となるとともに、主MB境界の有力な候補である。本研究では、年代約766 kaに起こった期間1000年ほどの地磁気エクスカーションも発見した。