東アジア夏季モンスーン前線移動に伴う東シナ海内側陸棚堆積物中細粒砕屑性石英の過去6000年間の供給源変化
- Keywords:
- Electron spin resonance, Crystallinity index, East Asian summer monsoon, The Yangtze River drainage, The East China Sea
東シナ海内側陸棚の堆積物は,揚子江という大河から流出する砕屑物を含んでいるため,陸上気候の変動に関する貴重な情報を有している.本論文において我々は,東シナ海内側陸棚にある泥帯から採取されたMD06-3040堆積物コア中に保存されている細粒石英の供給源変化を過去6000年間に渡り検討した.揚子江から懸濁態輸送されたと考えられる堆積物中の細粒シルト(4–16 µm)画分の供給源を,石英粒子の電子スピン共鳴(ESR)信号強度と結晶度(CI)に基づいて推定した.堆積物中細粒シルト画分に含まれる石英のESR信号強度とCIを,現在の揚子江集水域内の様々な支流域のものと比較したところ,揚子江の北西集水域起源の河川懸濁物と南東集水域起源の河川懸濁物を見分けることができた.これが可能な理由は,東アジア夏モンスーン(EASM)前線の移動は,主要な降水域の変化としてモニターでき,それは揚子江から流出する細粒シルト画分中の石英のESR信号強度とCIから推定される原岩の時代と種類の変化に現れるためである.細粒シルト画分の供給源時代変化から,EASM降水の主要地域(ほぼEASM前線を示す)の移動が,数百年から数千年の時間スケールで起こり,EASM降水前線が最も北西に深く入り込んで強化されたのが3500–2000年前,南東に留まって弱化したのが6000–4100年前および2000–0年前であったことが明らかになった.