地震発生領域の深部境界に対する地殻内の石英と長石の摩擦特性の影響
- Keywords:
- Fault friction, Quartz, Feldspar
地殻内における地震発生領域の深部方向の広がりやその範囲は,地震の大きさに密接に関係している.したがって,地震発生領域の深部境界を決めるメカニズムの解明は地震学や災害の軽減にとって重要な課題である.室内における岩石実験研究は地震発生メカニズムが断層を構成する物質の摩擦特性によってコントロールされていることを明らかにしてきた.そこで,地殻構成鉱物の摩擦特性や,それが地震発生に及ぼすメカニズムを考察するために,600℃までの温度範囲で,水の存在しない状態(Dry)と存在する状態(Wet)で,地殻岩石を構成する主要鉱物である石英と長石の摩擦特性を測定した.その結果,水の存在する状態では,長石の方が石英よりも,摩擦の速度依存性が負になる温度範囲が広いということがわかった.これは,長石の方が石英よりも,地震すべりが発生する不安定領域に相当する温度範囲が広いことを示している.今回の結果は,地殻深部ほど温度が高くなっていくということを考慮すると,長石の摩擦特性が地震発生領域の深部境界を制限するのに主要な役割をはたしている可能性を示唆している.