繰り返し地震の検出と断層スロースリップ推定への応用
- Keywords:
- Repeating earthquake, Interplate slip, Fault creep, Aseismic slip
繰り返し地震は、クリープ(スロースリップ)が卓越する断層上に存在する地震性のパッチでの、周囲のクリープによる地震間の応力の蓄積と地震時の応力の解放によって生じる。この繰り返し地震と断層クリープの関係は、断層でのスロースリップの状況をモニタするために利用できる。つまり繰り返し地震は、断層に埋め込まれたクリープメータとして用いることができる。本レビューでは、このような目的での繰り返し地震の利用のために重要な同じパッチの破壊を確実に選び出す方法、および繰り返し地震によるスロースリップの推定の特徴について紹介する。繰り返し地震の選定には、地震波形の相似性あるいは震源位置の同一性が基準として用いられる。震源位置を基にした抽出では、すべり域の一致の確認のために、断層サイズに比べ震源位置の精度が十分高いことが必要である。一方、波形相似性を利用した抽出では、隣接した地震との区別のために、十分高い周波数範囲の波形を使用する必要がある。適切でない抽出基準は、誘発された地震など同じ場所の繰り返し地震でないものを含んでしまい、スロースリップの推定に大きな誤差を与える。適切な抽出基準の設定には、繰り返し地震の発生間隔や活動の継続期間も有力な情報となる。繰り返し地震は、測地学的な推定とは独立な断層クリープの推定を提供し、両者が利用できる場合、その結果は調和的な場合が多い。また、横ずれ断層における断層深部や沈み込み帯での海溝近傍など、測地学的データによるすべり推定の解像度が限られることが多い領域で特に有効である。繰り返し地震によるスロースリップの推定は、測地学的な推定に対して、粘弾性的な変形や間隙弾性反発など、大規模な地震の場合顕著となる断層の外で起きる変形による影響を受けないという利点もある。一方、弱点としては、断層面上での不均一な分布や地震の規模からすべり量を推定するために必要なスケーリング則の精度が挙げられる。異なるスケーリング則間には推定されるすべり量に大きな差が存在する。断層におけるすべり過程では、地震による速いすべりだけでなく、スロースリップが重要な役割を担っており、繰り返し地震解析は、プレート間の定常すべり、余効すべり、自発的な周期的すべりなどの断層でのゆっくりとしたすべり現象の解明に大きく役立っている。