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国際深海科学掘削計画第356次航海で採取された海洋堆積物コアから示される過去14,000年間の夏季オーストラリアモンスーン変動史

国際深海科学掘削計画第356次航海で掘削されたSite U1461は北西オーストラリアの大陸棚上に位置し、ここからは中新世から完新世の堆積物が採取された。北西オーストラリアは夏季オーストラリアモンスーンの影響下にあり、Site U1461は降雨帯の南端に位置している。また、Site U1461の堆積物に含まれる陸源性堆積物はオーストラリア大陸起源であるので、北西オーストラリアにおける気候変動を記録していると期待される。本研究で貝類および浮遊性有孔虫の放射性炭素年代測定を行った結果、Site U1461の上部14 mは完新世の気候変動を記録していることが明らかになった。X線コアスキャナーによるK/Ca比と船上で測定された自然γ線量から復元されたKの含有量(%K)の変動は河川によるオーストラリア大陸からの陸源性堆積物の供給量の指標と解釈される。本研究では、これらのデータに基づき、北西オーストラリアにおける夏季オーストラリアモンスーンの変動史を復元した。 Site U1461では11.5 ka(11,500年前, ka: 1,000年前)に陸源性堆積物の供給量が増え、8.5 kaに最大に達した。これは熱帯収束帯の南下により夏季オーストラリアモンスーンが強化されたことが原因であると考えられる。8.5 ka以降には、熱帯収束帯の北上に伴う降水量低下により、陸源性堆積物の供給量が低下した。これらのことから、8. 5 kaに熱帯収束帯が最も南下し、北西オーストラリアに降水をもたらした可能性が示唆される。この完新世における気候変動は、間氷期においても夏季オーストラリアモンスーンの活動が熱帯収束帯の位置に支配されていることを示している。