海底地震計記録を用いた地震波干渉法から検出された2011年東北地方太平洋沖地震とスロースリップに伴う地震波速度の時空間変化
- Keywords:
- Ambient noise, Autocorrelation function, Seismic interferometry, Slow slip event
常時微動を用いた地震波干渉法は,巨大地震に伴う地震波速度の時間変化を検出する手法として有効である.日本海溝付近では,2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)の発生前にスロースリップ(SSE: Slow Slip Event, Mw7.0)と低周波微動が検出された.我々は,2011年東北地方太平洋沖地震の発生前から震央周辺に設置されていた17点の海底地震計(OBS: Ocean Bottom Seismometer)の記録の常時微動に地震波干渉法を適用し,自己相関関数(ACF: Autocorrelation Function)の時間変化から本震やSSE,低周波微動に伴う地震波速度変化の検出を試みた.
解析の結果,本震後に,本震で大きく滑った領域で1~2%の速度低下が検出された.また,SSE発生期間の初期には,SSE断層周辺で非常にわずかではあるが速度上昇が検出された.さらに,多くの観測点で低周波微動に伴って速度変化由来ではないACFの変化が検出された.常時微動を用いた地震波干渉法では,常時微動の震源分布が等方的かつ時間変化しないことを前提条件として,相互相関関数(CCF: Cross-Correlation Function)や ACFの時間変化から地震波速度変化を推定する.しかしながら,この前提条件が満たされない場合,例えば,震源分布が時間変化する場合には,地震波速度が変化しない場合でもCCFやACFが時間変化してしまうため,地震波速度変化を議論することはできない.今回検出した低周波微動に伴うACFの時間変化は,低周波微動の発生期間のみに検出されていることから,常時微動の震源分布が低周波微動に伴って変化したことによる変化である可能性が高い.低周波微動により常時微動の震源分布が変化するのであれば,ACFを定常的にモニタリングすることで低周波微動を検出できる可能性が高く,今回得られた結果はその可能性を支持している.