日本語要旨

変形構造から推定される巨大海中土石流内部の応力および間隙水圧の時間変化

北海道東部白亜系根室層群厚岸層における海底地すべりに伴った堆積物(Mass transport deposit,MTD)の内部応力と間隙水圧の時間的変化を調べた。最初に、MTDブロックのメソスケールの断層からの過去の古応力を解析した。その結果 、海中土石流の発達の間に2つの段階(Phase IおよびPhase II)が認められた 。Phase Iでは斜面を流れる間の海底土石流の流れの方向と調和的な応力、Phase IIでは、ブロックが盆地に堆積した際に圧縮を受けた。次に 断層の方向のバリエーションから間隙水圧比を推定した。Phase IからPhase IIへの移行中の間隙水圧比は、Phase IIの初期の段階で上昇し続け、その後のPhase II後半では減少したが、最大水平圧縮応力はPhase II中で増加した。間隙水圧比の時間変化は、海中土石流中央部の先端の運搬速度が低下した時に被った 圧縮に起因する過剰な間隙水圧によってコントロールされており、これは海中土石流発達のダイナミクスに関連する。間隙水圧は海中土石流のダイナミクスにおいて決定的に重要な役割を果たすが、大きな海中土石流および、その結果として生じるMTDにおける応力場および間隙水圧比の両方を定量化する方法はこれまでなかった。露頭調査で得た著者らの結果は、MTDブロックのメソスケールの断層が海中土石流の運搬機構をより良く理解するための手がかりを提供できることを示唆している。