北東ユーラシアで発生した2002年の高温事例における土壌水分-大気間フィードバックの役割
- Keywords:
- Extreme temperature, Soil moisture, Land–atmosphere interaction, Northeast Eurasia
2002年の夏,北東ユーラシアでは異常な高温と低い土壌水分が観測された.本研究では,領域気候モデルWRFを用いて,実際の土壌水分-大気間の相互作用を考慮した場合とその影響を除いた場合の2種類の実験により,土壌水分が地上気温や降水に与える影響を調査した.相互作用がない場合には,衛星観測に基づく土壌水分データをモデルに与えた.両実験とも,対流圏中層のリッジが持続的に存在したことにより,地上の異常高温イベントを再現していた.さらに,乾燥した土壌のもとでリッジが強まり,地上気温の上昇が強まっていることが確認された.
土壌水分-大気間の相互作用がある実験とない実験における地上気温の変動性を比較したところ,土壌水分と地上気温の相互作用が6月~8月に強まっていることが分かった.この相互作用の強まりが北東ユーラシアの乾燥土壌条件下で異常高温の発生可能性をより高めていたと考えられる.これらの結果は,地上気温の上昇に対して土壌水分-大気間のカップリングが重要であることと,その重要性が時空間的に変化することを示している.特に,北東ユーラシアにおいては,盛夏に発生する異常高温イベントの期間に,土壌水分-大気間のカップリングが気温の予測に重要となる.したがって,この地域における気候変動に対する極端な熱波の影響評価を行うに際しては,陸面過程モデルが陸面-大気間のカップリング強度を適切に再現できることが肝要であるといえる.