海大陸観測年事前キャンペーン中のマッデン・ジュリアン振動通過によって劇的に発達したスマトラ西岸沖のバリアレイヤーの形成過程
- Keywords:
- Barrier Layer, Madden Julian Oscillation, Air-sea interaction
2015年12月のマッデン・ジュリアン振動(MJO)通過によって劇的に発達したスマトラ西岸沖のバリアレイヤーの形成過程を調べた。MJO通過前において、深度20mより上層の塩分成層は極めて強く、研究船「みらい」の観測に基づくバリアレイヤーの厚さは、5-10mであった。12月13日から16日にかけてのMJOに伴う強い西風強制下において、等温層は、20mから100mまで劇的に深まった。その一方、混合層深度の増大は、等温層深度の増大から1日遅れで生じており、結果的にバリアレイヤーの厚さは、24時間で60mも劇的に増大した。塩分の鉛直傾度の評価によって、その劇的なバリアレイヤーの発達は、大気からのMJO強制に伴う海洋の鉛直混合と外洋から侵入していた沈降する沿岸ケルビン波によるものであることが示された。さらに、水温の鉛直傾度の評価によって、バリアレイヤー内における水温逆転がMJO強制に伴う表層の冷却と水温の鉛直傾度の鉛直移流によって形成されていたことがわかった。このバリアレイヤーの劇的な発達における最も重要な要因の一つは、大気からの外部強制と海洋内部の波動が同位相で生じていたことであると結論された。すなわち、沈降する海洋ケルビン波は、11月中旬から12月末まで継続的に水温躍層を押し下げ、鉛直伸長の効果によって水温躍層付近の塩分成層を緩和し続けていた。その条件下において、MJO強制が海洋表層の強い塩分成層と水温成層の鉛直混合を引き起こした。そうした2つの異なる過程が同時に生じることでバリアレイヤーの劇的な発達を可能にし、MJO到達の5日後には最大で85mに達するバリアレイヤーが形成された。